「新築1LDK、28㎡!」
物件情報サイトでこういう広告を見つけて、「お、新築で1LDKか、広そう!」と思ったあなた。
ちょっと待ってください。
最近の「新築1LDK」、昔のあなたが想像している1LDKとは、全然別物かもしれないんですよ。
僕は大阪市内で賃貸管理会社の仕事をしているんですけど、ここ数年、業界の常識がガラッと変わったなと感じているんです。今日はその話を、業界の本音で書いていきます。
部屋探しをしているあなたが、物件情報の「1LDK」「1DK」という表記に騙されないために、知っておいてほしい話です。
結論先出し:最近の「新築1LDK」は、昔の1Kサイズです
最初に結論を言ってしまいますね。
「1LDK」「1DK」という間取り表記の意味が、ここ数年で完全に変わってしまいました。
昔なら「1K」として設計するのが当たり前だったサイズの物件が、今は無理やり「1LDK」「1DK」の設計にされて売られています。
これは僕の感覚値ではなく、実際に現場で起きている現象です。理由はあとで詳しく書きますが、まずは「最近の新築1LDKは昔のサイズ感じゃない」という事実を、頭に入れておいてください。
昔の「まともな」1K・1DK・1LDKの基準
まず、僕が現役で仲介をやっていた頃の感覚値を共有しますね。だいたい5年前くらいまでの基準です。
広めの1K:28〜30㎡ 標準的な1Kはこれくらいでした。1Kといっても、洋室6〜7畳にミニキッチン、という普通に住みやすいサイズです。
1DK:最低でも30㎡以上、理想は35㎡くらい DK部分が6畳、寝室が4.5〜6畳、トータルで10畳超え。これがあって、ようやく「ちゃんとした1DK」と呼べました。
1LDK:最低でも35㎡以上 LDKが10畳くらい、寝室が4.5〜6畳。これが「ようやく1LDKと認められる」というラインです。
昔の家賃相場(新大阪周辺の感覚値)
参考までに、5年くらい前の新大阪周辺の新築、築浅物件の家賃相場も書いておきます。
- 広い1K:〜8.5万円程度
- 1DK:9〜10万円
- 1LDK:9.5〜11.2万円
このとき、平米単価は3,000円を切るのが普通でした。30㎡超えの物件なら、家賃を平米数で割ると3,000円未満。これが当時の感覚値です。
ところが今——新大阪エリアの新築の実態
さて、ここからが本題です。
今、新大阪エリアで募集に出ている新築の物件、実際にどうなっているのか。リアプロ(業界のデータベース)を見ながら整理してみました。今は5月で、繁忙期を逃して残っている新築のラインナップですが、それでも傾向はハッキリ見えます。
物件A
- 1LDK、約35㎡
- 家賃約14万円台〜
- 平米単価:約4,000円
物件B
- 1SLDK、約41㎡(実質ほぼ2LDKに近い作り)
- 家賃約17万円台
- 平米単価:約4,200円
物件C
- 1LDK系、約50㎡
- 家賃約20万円
- 平米単価:約3,800円
物件D
- 1LDK、約28㎡
- 家賃約11万円
- 平米単価:約3,800円
気づきましたか?
平米単価がほぼ全部4,000円超えなんです。
昔は3,000円切るのが普通だった世界が、今は4,000円超えがノルマみたいになっています。
そして注目してほしいのが物件D。
「1LDK、約28㎡」
これですよ。
一番危ないのは「無理やり1LDKに作った」物件です
ここ、誤解のないように先に書いておきます。
「1LDK」という間取りの定義自体は、寝室とリビングダイニングが分かれていればOKなんです。だから、たとえ狭くても、ちゃんと部屋が分かれていれば1LDKを名乗ること自体は問題ありません。
問題は、本来1Kとして設計すれば住みやすい広さの物件を、無理やり1LDKに作っていること。これが今、新大阪エリアで大量に出てきているんですよ。
物件Dみたいに、30㎡を切る広さで無理やり1LDKに仕立てた物件が、最近すごく増えています。
具体的に何が起きているかというと、こういう間取りになっています。
- 寝室:3畳台(ひどい場合は3.2畳とか3.5畳)
- キッチン込みのLDK:9〜10畳
- トータル:12〜13畳前後
寝室3畳台って、想像できますか?
ベッド一個置いたら、もう他に何も置けないんです。
クローゼットを開けるスペースも怪しい。サイドテーブルなんて夢のまた夢。ベッドを諦めて布団にすれば多少マシですが、それでも空間としてはほぼベッドルームというより「就寝専用カプセル」みたいな感じです。
リビング側も、キッチン込みで9畳って書いてあっても、キッチン部分を引いたら実質6〜7畳。テレビとソファ置いたら、もう食卓は厳しいかもしれません。
昔ならこの広さは、1Kとして設計するのが当たり前だったんですよ。28㎡なら、洋室を7〜8畳取って、キッチンも独立させて、すっきり使える1Kになる。それが今は、無理やり仕切って寝室3畳の1LDKにされている。
設計の発想が、根本的に変わってしまったということなんです。
なぜこうなったのか——業界の事情
ここ、業界にいる人間として、本音で書きますね。
理由は3つあります。
理由1:建築費・土地代の高騰
これは説明不要かもしれませんが、ここ5年で建築コストは爆上がりしました。同じ広さで作っても、家賃を昔より高く設定しないと採算が合わない。
理由2:1K大量供給時代の反省
数年前まで、新築は20〜23㎡くらいの1Kを大量に作る時代でした。でも市場が飽和して、新築でも1Kだと差別化できなくなった。
それで業界が出した答えが、「もう少し広く作って、1DK・1LDKとして売り出そう」という戦略です。
理由3:それでも家賃は10万円前後に収めたい
ただし、本来の意味の1LDK(35㎡超え)にすると、家賃が12〜15万円とかになってしまう。そうすると新大阪エリアの需要層には届かない。
だから「ちょっと広い1K」のサイズを無理やり1LDKに仕立てて、家賃を10万円台に収めつつ、ちょっと高めに取る——という戦略になっているわけです。
これ、業界としては自然な流れなんですが、部屋を探している側からすると、知らずに契約すると「あれ、思ったより狭い」となる原因になっています。
部屋探しのチェックポイント
じゃあ、騙されないためにどうすればいいか。
シンプルです。間取り表記だけ見ないこと。
具体的には、以下の3つを必ずチェックしてください。
1. ㎡数を必ず確認する
「1LDK」と書いてあっても、㎡数が30㎡を切っていたら警戒です。本来の1LDKは35㎡以上が基準だと頭に入れておいてください。
2. 寝室の畳数を確認する
これが一番大事。寝室が3畳台の物件は、本当に寝るためだけの空間だと思ってください。4.5畳以上を目安にしましょう。
物件情報サイトで間取り図を見るとき、各部屋の畳数表記を必ず見るクセをつけるといいですよ。
3. 内見で家具配置をシミュレーションする
実際に内見に行ったら、メジャー持参で。
自分が使っているベッドのサイズ、テレビ、ソファ、書棚——これらが実際に置けるか確認してください。寝室にベッドを置いたとき、両サイドに通路は確保できるか? クローゼットの扉は開けられるか?
写真だけだと広く見えるように撮ってあるので、油断禁物です。
実は、古い1Kの方が住みやすいケースもあります
ここ、知っておいてほしい話です。
22〜23㎡で素直に「1K」として作られた築古物件と、28㎡を無理やり「1LDK」にした新築物件。
住み心地で比較すると、必ずしも新築1LDKが勝つわけじゃないんです。
築古1Kは、間取りに無理がない分、家具配置がしやすい。広めのワンルームとして使う方が、寝室3畳の1LDKよりずっと快適、というケースは普通にあります。
そして何より、家賃が安い。
新築の見栄えに惹かれる気持ちはわかります。でも、住んでみて「狭い」「使いにくい」と感じる物件で家賃を払い続けるより、自分の生活にフィットする物件を選んだ方が、絶対に幸せです。
もう一つの選択肢:「広めの古い1DK・1LDK」が今、刺さっています
最後に、もう一つだけ話させてください。
これ、業界内でじわじわ広がっている現象なんですけど、「広めの古い1DK」を選ぶ人が増えているんです。
特に増えているのが、同棲や新婚の予算10万円以下のカップル層。
僕が仲介をやっていた頃、新婚さんが選ぶ物件って、面積で言ったら最低でも40㎡以上、間取りは2DK・2LDKがスタートでした。広い1LDKでもOKっていうお客さんもいましたけど、基本は「ちゃんとした2DK以上」だったんです。
でも今、その層が新築の2LDKに手が届かなくなっています。さっき紹介した物件Bみたいな新築は、40㎡台でも17万円。月10万円以下で2LDKは、新築だと郊外のハウスメーカー系くらいしか選べなくなってきている。
そこで何が起きているかというと、築年数は経っているけど35㎡以上ある広めの1DK・1LDKに、この層が流れているんですよ。
僕の担当物件でこの傾向をハッキリ感じています。
僕が担当を引き継いだ頃は、35㎡前後の1DKで2人暮らしをしているのは1室くらいしかなかったんです。それが、ここ2年で6〜7組くらいに増えました。「最初から2人で住みます」と申告してくる若いカップルが、明らかに増えている。
つまり、新築の狭い1LDKが大量供給されている裏で、ちょっと広めの古い1DK・1LDKの価値がじわじわ上がっているということなんです。
実際、家賃にも反映されています。
以前担当していた新大阪エリアの類似物件は、僕が現役で仲介していた頃は7〜8万円台で決まっていました。でも今、同じサイズ帯の物件の募集を見ると、込み10万円。この数年で1万5,000円〜2万円ほど家賃が上がっています。
これ、単なる相場上昇じゃなくて、「新築の狭い1LDKに住めない層が、広めの古い1DKに流れてきている」需要シフトの証拠だと、僕は見ています。
まとめ:表記に惑わされない部屋探しを
長くなったので、最後にまとめますね。
部屋を探しているあなたに伝えたいことは、3つです。
1. 「新築1LDK」という言葉だけで判断しない
㎡数、畳数を必ず確認してください。僕は1LDKなら、35㎡以上、寝室4.5畳以上が快適に住めるラインだと思っています。
2. 古い物件にも、本当にいい選択肢があります
築年数だけで切り捨てないでください。広めの1DK・1LDKで、新築の狭い物件より住み心地のいい物件、たくさんあります。
3. 業界には「表記の罠」があることを知っておく
業界の事情で、間取り表記の意味が変わっています。これを知っているだけで、部屋選びの精度が全然違ってきます。
新築だから優れている、築古だから劣っている——そんな単純な世界じゃないんです。
賢く選んで、自分にとって本当に快適な部屋を見つけてくださいね。
次回予告
ここまで読んでくれた方の中には、もしかしたら賃貸物件を持っているオーナーさんもいるかもしれません。
そう、このブログ「賃貸管理ノート」は、本来オーナーさん向けに書いているブログなんです。
今日の話、オーナーさんの立場から見ると、実はものすごく大きなチャンスでもあるんですよ。
「広めの古い1DK・1LDK」の需要が上がっているということは、そういう物件を持っているオーナーさんは、適正に家賃を見直せば、今までより高い賃料で募集できる可能性があるということ。市況を読める管理会社と組めれば、ちゃんと利益として回収できます。
次回は、この「狭い新築1LDKラッシュ」をオーナー視点でどう読み解いて、どう活かすかを書きます。築古物件を持っているオーナーさんには、特に読んでほしい内容にする予定です。