管理料ゼロの管理会社、なぜタダで成り立つのか?──オーナーが払っている「見えない費用」の正体

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「うちは管理料無料でやります」

こんな営業を受けたこと、ありませんか?

僕も業界の中にいるので、こういう打ち出し方をしてくる会社の話は時々耳に入ってきます。実際、一時期この手の打ち出し方で管理戸数を一気に増やした会社がありました。オーナーさんからすれば、毎月かかる管理料がゼロになるなら、そりゃ心が動きますよね。月10万円の家賃なら、5%でも5,000円。年間で6万円です。決して小さくない金額です。

でもね、ちょっと冷静になって考えてみてほしいんです。

管理会社って、いろんな業務をやってます。入居者対応、現地対応、クレーム処理、退去立ち会い、リフォーム手配、家賃の集金管理、督促、契約書作成……。これだけのことを「無料」でやれるわけ、本当にあると思いますか?

普通に考えて、おかしいんですよ。

じゃあ何で成り立っているのか。答えはシンプルで、管理料という名前以外のどこかで、ちゃんと回収しているからです。そしてその回収場所が、オーナーさんから見えにくいところにあるのが厄介なんです。

今日は、業界の内側にいる僕から見て「これはオーナーさんが知っておいた方がいい」と思う、管理会社の見えない収入源について、正直に書いていこうと思います。

目次

管理会社の収入は、管理料だけじゃないんです

まず大前提として、管理会社にはいろんな収入源があります。

健全な範囲で言うと、

  • 管理料(家賃の3〜5%が一般的)
  • 入居者募集業務手数料(いわゆる広告料)
  • 火災保険の代理店手数料
  • 賃貸保証会社の代理店手数料
  • 実際に動いた時の実働報酬(電球交換、簡易修繕など)

このあたりが、表に出ている収入です。ここまでは、まあ、業界の標準的な利益構造です。

問題は、ここから先なんですよ。

管理料をゼロにできる会社というのは、表に出ていない場所で利益を取る仕組みを、しっかり作り込んでいるんです。今から紹介する5つの「見えない費用」が、その正体です。

見えない費用①:付帯サービスという名の上乗せ商品

まず一つ目。これが一番わかりやすい例です。

入居者が契約する時の初期費用の明細、見たことありますか?

礼金、敷金、前家賃、仲介手数料、火災保険、保証料……このあたりまでは「まあ、わかる」費用ですよね。でも、よく見ると見覚えのない項目がいくつか並んでいることがあります。

  • 入居時消毒代:1〜2万円
  • 防虫抗菌施工費:1〜2万円
  • 防災グッズ(消火スプレー等):〜1万円
  • 24時間サポート費:2万円弱

ぜんぶ足すと、5〜6万円になります。家賃の半月〜1ヶ月分くらいですね。

これ、何の費用かというと、管理会社や仲介会社の利益です。

僕の会社にも過去、防虫消毒の業者から営業が来たことがあるんですけど、その時に提案されたのが「販売価格の4割をキックバックします」という内容でした。さらに親切なことに、「販売費用を上乗せしてもらえれば、キックバック額も増やせます」とまで言われました。

つまり、本来1万円で済む施工を1万5,000円で売れば、キックバックは6,000円。2万円で売れば、キックバックは8,000円。売れば売るほど、上乗せすればするほど、管理会社の懐に入る金額が増える構造なんですよ。

24時間サポートも似たような構造です。実際の運営コストに対して、販売価格にかなりの利益が乗っています。

しかも厄介なのが、これは管理会社だけじゃなくて、仲介会社が勝手につけているケースもあるということ。うちが管理している物件でも、仲介会社が独自に防虫抗菌サービスを案内してつけていて、後日入居者から「このサービスって何ですか?」と問い合わせが来て、僕らも「?」となることがあります。

オーナーさんから見ると、これらの費用は自分の収入になっているわけじゃないので、「まあ入居者が払うものだし」と気にしないかもしれません。でも、考えてみてください。

入居者が物件を最終2軒で迷っている時、

  • A物件:初期費用30万円
  • B物件:初期費用35万円(付帯サービスで5万円増)

どっちが選ばれやすいかは、明らかですよね。

付帯サービスがてんこ盛りの物件は、決まりにくくなるんです。これがオーナーさんに返ってくる、見えないコストです。

見えない費用②:更新事務手数料

二つ目は、更新時の話です。

そもそもの前提として、大阪では更新料を取る文化がほとんどありませんでした。10年くらい前は、全国展開している管理会社の物件でたまに見かけるかな、というくらいで、ほぼゼロに近かったです。

最近は東京式に合わせて更新料を取る物件も少し増えてきていますが、それでも体感で1〜2割くらい。大阪では「更新料なし」が今もスタンダードです。

ここで知っておいてほしいのが、「更新料」と「更新事務手数料」の違いです。

  • 更新料:オーナーの収入になるお金
  • 更新事務手数料:管理会社の収入になるお金

名前は似ていますが、お金の行き先が全く違います。更新事務手数料は、入居者が払っても1円もオーナーには入りません。管理会社が「更新の事務作業をしたので」という名目で取る費用です。

これも入居者目線で見ると、結構な負担なんですよ。家賃の半月〜1ヶ月分くらいを取られることが多いです。

大阪の入居者は更新料なしに慣れていますから、契約更新時に「更新事務手数料」という名目で家賃半月分くらい請求されると、「え、なんで?」となります。で、こういう物件は更新のタイミングで退去を検討されやすくなる。

結果として、回転率が上がって、オーナーは原状回復費と空室期間を負担することになります。

見えない費用③:工事利益10〜20%の中間マージン

三つ目は、リフォームや原状回復工事の話です。

退去が出ると、原状回復工事をしますよね。その時、オーナーさんは管理会社から見積もりをもらって、それを見て発注の判断をします。

ここに、見えにくいマージンが乗っているんです。

具体的には、リフォーム業者が出してきた見積もりに対して、管理会社が10〜20%上乗せしてオーナーに請求するパターンがあります。20万円の工事なら、24万円で請求が来る、という感じですね。

オーナーさんからすると、相場感がわからないので、見積もりが妥当かどうか判断できません。「管理会社が出してきた金額だから」と、そのまま承認してしまうケースがほとんどです。

これが、退去のたびに発生します。年に何件か退去があれば、それなりの金額になりますよね。

防衛策としては、別の業者にもセカンドオピニオン的に見積もりを取ってみることです。それだけで、相場との乖離がわかります。

見えない費用④:鍵交換代という名の謎の費用

四つ目は、ちょっと闇が深い話です。

入居時に「鍵交換代」という項目で、2万円前後を入居者から取るのが一般的です。これ自体は珍しいことじゃありません。

問題は、その2万円が実際の鍵交換に使われているかどうかです。

僕が業界で聞いた話を、いくつか共有します。

ケース1:あるオーナーさんが、退去のたびに自腹で鍵交換をしていた。「鍵交換は当然オーナーがやるもの」だと思い込んでいたからです。ところが後になって、入居者からは別途「鍵交換代」が徴収されていたことが判明した。つまり、入居者からは鍵交換代を取り、オーナーは自腹で鍵交換をしている、という二重取りの状態だったんです。オーナーさんはその事実を、何年も気づかないままでした。

ケース2:鍵交換代を取っているのに、実際には新しい鍵に交換していなかった。何をやっていたかというと、既存の鍵を物件間でローテーションしていた。つまり、A号室で使っていた鍵をB号室に、B号室の鍵をC号室に、という感じで使い回していたんです。

「じゃあその2万円って何の費用?」と聞いたら、返ってきた答えが「鍵を交換する手間賃ですね」でした。

……手間賃が2万円。

ちなみに、うちの会社では鍵交換代は鍵メーカーに支払う実費そのままで運用しています。シリンダー本体の価格はメーカーや型番によって違いますが、平均的には18,000円くらい。なので「鍵交換代」として入居者から請求する金額は、そのままシリンダー代として消えていきます。中抜きしようがないんですよ、実費なので。

それから、もし前の入居者が使っていたシリンダーを別物件にローテーションして使う場合は、新品を購入しないので、うちは費用を請求していません。当たり前ですよね、新しい鍵を買っていないんだから。

でも、業界全体を見渡すと、ローテーションしているのに「鍵交換代」として2万円取る会社が存在する。これが現実です。

すべての管理会社がこれをやっているわけじゃありません。むしろ少数だと思います。でも、こういうことが起きうる業界だ、ということは知っておいてほしいんです。

見えない費用⑤:広告料の囲い込み

最後、五つ目です。

これは以前別の記事で詳しく書いたので、ここでは要点だけ触れます。

オーナーさんが「入居者を決めてくれた仲介業者さんに渡してください」という意図で管理会社に支払う広告料(AD)。本来は仲介業者に渡されて、それを原資に仲介業者がポータルサイトに広告を出したり、追客のコストを賄ったりするためのお金です。

ところが、一部の管理会社はこの広告料を自社で全額取って、仲介業者には渡さないという運用をします。これが「囲い込み」と呼ばれる構造です。

そうなると何が起きるかというと、仲介業者からすれば、その物件を紹介してもインセンティブが入らないので、わざわざ積極的に紹介しないわけですよ。当然です。商売ですから。

結果、物件が決まりにくくなる

オーナーさんは「広告料を出しているのに、なんで決まらないんだろう」と悩むことになります。実際には、その広告料が現場の仲介業者まで届いていないから、決まらないんです。

この話の詳しい構造については、別記事に書いたのでそちらを読んでみてください。

家賃を下げる前に読んでください|管理会社の「抱え込み」で年間18万円失っていた話

結局オーナーが被るのは「決まりにくさ」という最大のコスト

ここまで5つの見えない費用を紹介してきましたが、改めて整理すると、こんな構造になっています。

オーナーさんから見える費用:管理料

オーナーさんから見えない費用:

  • 付帯サービスのキックバック
  • 更新事務手数料
  • 工事利益の上乗せ
  • 鍵交換代の中抜き
  • 広告料の囲い込み

「管理料無料」を打ち出せる会社というのは、この見えない部分で、しっかり回収する仕組みを持っているから成り立っているんです。

そして、オーナーさんが最終的に被る一番大きなコストは何かというと、お金の話じゃないんです。

物件が決まりにくくなること、これが一番痛い。

月の管理料5,000円をケチって浮かせても、空室が1ヶ月伸びれば10万円の損失です。2ヶ月分浮かせた管理料が、空室1日で消し飛ぶんですよ。

しかも、管理料ゼロを打ち出している会社って、急激に管理戸数を増やすケースが多いんです。さっき少し触れた、一時期「管理料無料」で管理戸数を爆増させた会社。あの会社、その後どうなったかというと、現場が回らなくなったんです。

うちにも、その会社からの管理替えの相談がありました。話を聞いたら、退去から3ヶ月経ってもリフォームが手配されず、空室のまま放置されていたそうです。3ヶ月空室ということは、家賃にして30万円分の機会損失です。管理料を浮かせた分なんて、軽く吹き飛ぶ金額ですよね。

安さに飛びついて、結果として一番大事な「物件を回す」という管理会社の本業がおろそかになる。これが、管理料ゼロの会社の構造的なリスクです。

まとめ:物件資料を見れば、その管理会社の体質がわかる

ここまで読んでくださったオーナーさん、お疲れさまでした。

最後に、自分が今委託している管理会社が「見えない費用」をどれくらい取っているか、確認する方法を一つお伝えします。

自分の物件の募集資料を、管理会社に取り寄せてみてください

そこに、

  • どんな付帯サービスがついているか
  • 更新事務手数料はついているか
  • 鍵交換代はいくらで設定されているか
  • 広告料はいくら出している設定になっているか

これらが、全部書いてあります。

「いやー、自分の物件の資料くらい見たことあるよ」と思うかもしれません。でも、改めて入居者目線で見直してみると、初期費用の重さに気づくはずです。「自分が入居者だったら、この初期費用払ってまでこの物件選ぶかな?」という視点で見てみてください。

それから、もう一歩進んで管理会社全体を評価したい方は、別途まとめた採点シート付きのガイドがあります。10の質問項目に答えていくと、今の管理会社の点数が出るようになっています。

管理会社を見極める10の質問|現役社員が本音で解説する「点数化」採点シート付き完全ガイド

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この記事を書いた人

不動産業界歴約15年。仲介8年→現在は賃貸管理・リーシングがメイン。古い物件をリフォームで蘇らせて賃料アップを狙うのが一番の生きがい。
管理の現場で「オーナーさん、それ知らないと損してますよ…」な場面に遭遇しすぎて、このブログを始めました。
保有資格
宅建士/二級建築士/賃貸不動産経営管理士/賃貸住宅メンテナンス主任者/消防設備点検資格者/管理業務主任者

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