「賃上げしてもらえますか?」──”家賃は下がるもの”って、誰が決めたんですか?

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こんにちは、バルです。

オーナーさんから、よくこんな相談を受けるんですよ。

「築年数も経ったし、もう家賃は下げるしかないですよね?」

僕、毎回こう返してるんです。

「本当にそうですかね?」

正直に言うと、賃上げって簡単じゃないんですよ。法律的にも、現場の感覚としても、ハードルはあります。でも、「難しい」と「絶対できない」は違う。そして、チャンスを活かせる管理会社と、思考停止でスルーしてしまう管理会社は、はっきり分かれるんです。

今日は、そのへんを正直に話していきますね。

ちなみに、この記事は「良い管理会社を見極める10の質問」シリーズの一本です。シリーズ全体の質問リストはこちら👉 良い管理会社を見極める10の質問|現役社員が教えるチェックリスト


前提:契約期間中の賃上げは、基本的にムリなんです

最初に、フェアに前提の話をしておきます。

賃貸借契約書には、だいたいこういう一文が入ってるんです。

「賃料の増減は、貸主・借主双方の合意による」

つまり、契約期間中に「家賃上げます!」って一方的に通告しても、借主さんが「嫌です」と言えば、基本的に上げられないんですよ。たまに書面が送られてきて、うっかり捺印しちゃった借主さんもいるんですけど、それも本来はちゃんと交渉プロセスを踏むべきなんです。

しかもですね、ここ大事なんですけど、管理会社が前に出て賃上げ交渉をするのは、実は弁護士法に触れる可能性があるんですよ。いわゆる非弁行為ってやつです。

だから、管理会社にできることは「オーナーさんの意向を借主さんに伝える」までで、ガッツリ交渉に出るのはアウト。これ、知らない人多いんですよね。

じゃあ、賃上げって絶望的なのか?というと、そうじゃないんです。

ちゃんとチャンスのタイミングがある。そこで動けるかどうかで、管理会社の実力がはっきり出るんですよ。


チャンス①:退去→新規募集のタイミング【ここが本命】

賃上げの一番のチャンスは、ぶっちゃけここです。

前回の入居者さんが退去して、次の入居者さんを募集する時。このタイミングは、契約上の縛りがリセットされるので、新しい家賃で出すこと自体は自由なんですよ。

でもね、ここで管理会社が二つに分かれるんです。

ダメな管理会社:「前回と同じ家賃で行きましょう」

これ、本当に多いんです。退去の連絡が入って、原状回復の話をして、で、募集の話になったら「じゃあ前回家賃の◯万円で出しましょうか」で終わり。

なんで思考停止するかって、その方がラクだからです。前回家賃で出して決まらなかったら「相場が下がってますね、少し下げましょう」って言える。逆に上げて決まらなかったら、オーナーさんに「上げたから決まらなかった」って言われるリスクがある。

担当者の立場で考えると、「下げる」は責められないけど、「上げる」は責任を負うんですよ。だから、思考停止で前回家賃のまま出す方が、組織的に安全なんです。

……というか、そもそも「決まらない」のは家賃のせいじゃないかもしれないんですよ。これはまた別の話なので、気になる方はこちらの記事をどうぞ。

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良い管理会社:毎回、根拠を持って値付けを提案する

一方で、ちゃんとした管理会社はこうです。

「今回、周辺相場がこのくらい動いてます」「この設備を入れたので、ここまで上げられる見込みです」「直近の成約事例だとこの価格帯で決まってます」

こうやって、上げる根拠も、下げる根拠も、数字で語れる

ちなみに、こういう値付けができる管理会社って、必ず競合物件をちゃんと見てるんですよ。逆に、競合を見てない管理会社は、根拠のある提案ができるはずがないんです。

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そして、ここからが本題なんですけど、僕、実際に賃上げで決めてきた事例、結構あるんですよ。


ここで実例を一つ:築25年超で、新築時の家賃を超えた話

僕が担当している築25年超のワンルームマンションがあるんです。

普通に考えたら、築25年って検索でどんどん埋もれていく時期です。「築20年以内」で絞られたら表示されないし、家賃も下げ圧力がかかる時期。

でも、この物件、もともと7万〜7.5万円で決めていたのを、直近の最高値で8.5万円まで上げて決めてます。一番古い契約は、ちなみに7万7千円。それを今、新築で建ったときの家賃を超えるところまで持ってこれてるんですよ。

なんで上げられたか。ポイントは三つあります。

一つ目、しっかりリフォームをしたこと。 古臭くなったクッションフロアを全部フロアタイルに、ツーハンドル水栓をシングルレバーの混合水栓に、クロスも全部張り替え。中途半端に継ぎ接ぎにせず、ちゃんと全部やる。エアコンも10年〜15年経ってるやつは交換。

(ちなみに、クロスの選び方ひとつで張り替え周期が変わるって、知ってますか?こちらの記事もどうぞ👉 玄関のクロスをグレーにしたら、張り替え周期が延びた話

二つ目、相場全体の底上げ。 東京の家賃が上がって、大阪もそれに引っ張られて、新築の家賃がどんどん上がってます。新築が上がると、中古もそれに合わせて上げられる余地が出てくるんですよ。

三つ目、安価で見映えする設備の追加。 別の担当物件では、ウルトラファインバブルのシャワーヘッドをつけたんです。安いものなら3千円〜4千円、ちょっと良いやつでも1万円以内。少ない投資で「設備が充実してる物件」って印象を作れるので、これコスパ良いんですよ。

こういう積み重ねで、築17年の物件で新築時の家賃まで戻したり、築25年超で新築時を超えたりっていうのが、実際にできるんです。

「築年数が経ったから家賃は下げるしかない」って、本当ですかね?


知られざるカラクリ:2回転目の方が、家賃を上げやすい

これ、知らないオーナーさん多いんですけど、新築時より2回転目の方が、家賃を上げやすいんです。

カラクリを説明しますね。

新築時って、戸数が多いじゃないですか。一棟丸ごと空室の状態でスタートして、しかもオーナーさんの返済が竣工から2〜3ヶ月で始まる。だから、あんまり強気の家賃で攻めて、稼働率が半分とかになったら、もう取り返しがつかないんですよ。

なので、新築時は相場通り、もしくはちょっと安めにして、一気に埋める戦略を取ることが多いんです。

ところが、入居者さんが入って2〜3年経って、ぽつりぽつりと1部屋ずつ退去が出てくる。この時、希少性は逆に上がってるんですよ。だって、そのマンションで募集してるのは、その1部屋だけなんですから。

しかも、新築時に一気に埋まった物件って、仲介業者さんに「あの物件は人気だった」っていう印象が残ってるんです。だから「あの物件、空き出たんですか!」って、走ってもらいやすい。

つまり、新築時の戦略的な価格設定 → 2回転目の希少性 → 仲介の好印象、この三つが揃うので、2回転目の方が上げやすいんです。

これを理解してる担当者って、意外と少ないんですよ。


チャンス②:市場環境が大きく動いたタイミング

二つ目のチャンスは、契約期間中であっても、市場環境が大きく動いた時です。

新駅の開業、再開発、物価上昇、競合物件の減少。こういう変化があった時は、既存の入居者さんに対しても「家賃見直しの相談ができるかもしれない」タイミングになります。

ただし、ここで最初に話した非弁行為の問題が出てくるんですよ。

管理会社が前のめりに交渉したら、それは弁護士の領域に踏み込んでしまう。だから管理会社単独では、ガッツリ動けない。

でも、何もできないわけじゃないんです。

ここで重要なのは、「市況の変化を察知して、オーナーさんに報告できるか」「契約書の条項に則って、適切に意向を伝える書面を作れるか」「必要であれば、弁護士さんと連携する道筋を作れるか」っていう視点です。


ここでも実例:新駅開業で、+1.5万円の賃上げに成功した話

僕、実際に動いた事例があるんですよ。

ある分譲マンションの一室で、契約してから9年近く経ってる物件。もともと最寄り駅から徒歩20分くらいの立地だったんですけど、鉄道の延伸で新駅ができて、そこから徒歩5分の立地に変わったんです。

周辺に商業施設も増えて、路線価も明らかに上がってる。誰がどう見ても、「賃料を見直してしかるべき状況」になってたんですよ。

こういう時、契約書を確認するんです。だいたいの契約書には「賃料相場が変わった時に、双方で家賃の増減について相談できる」っていう条項が入ってる。これに則って、オーナーさんの代理として意向を伝える書面を出しました。

借主さんの反応もよくて、「もともと安く住ませてもらってるんで」っていう感覚があったみたいで、わりとスムーズに交渉に応じてもらえました。

オーナーさんは当初+2万円を希望してたんですけど、最終的に+1.5万円でアップで着地。これ、ちゃんと動いたから出せた成果なんですよ。

一方、大手管理会社の「形だけのモーション」

ここで対比として、ちょっと残念な話もしておきます。

僕、別件で大手管理会社の対応を見たことがあるんです。社宅代行で借りてた部屋で、賃上げの打診が書面で来たんですよ。

その書面、なんと「応じます/応じません」の選択式で、返信フォーム付き。普通に考えて、誰も「応じます」に丸つけませんよね?家賃上がるの嬉しい人いないんで。

つまり、これって「賃上げのモーションは取りました」っていうアリバイ作りなんですよ。応じてもらえないのは分かりきってる。でも、書面は送った。だからオーナーには「動きましたが、応じてもらえませんでした」って報告できる。

これ、本当に賃上げに動いてるって言えるんですかね?僕にはちょっと、信じられないんですよ。


+α:賃料の裁量を、管理会社に持たせるという選択

ここまで「賃上げのチャンス」の話をしてきたんですけど、もう一つ、運営の質を左右する大事な要素があるんです。

それは、オーナーさんが管理会社にどれくらい賃料の裁量を渡してるか、ということ。

僕の感覚で言うと、ある程度の賃料の上げ下げの裁量を任せてもらえてるオーナーさんの方が、運営が圧倒的にうまく回ってます

なぜか。仲介の現場って、本当にスピード勝負なんですよ。

たとえば、お客さんが資料を見てる時に「あと千円下げてくれたら、ここで決められそうなんですけど」って交渉が入ったとします。この時、管理会社が即答できるかどうかで、勝負が決まるんです。

「オーナーに確認して、明日折り返します」って言ってる間に、お客さんは別の物件を契約してる。これ、本当によくある話です。

仲介業者さんから見ても、「この管理会社は即答できる」「ここの担当者は柔軟に動いてくれる」っていう印象が残ってると、次の空室の時もまた紹介してくれるんですよ。逆に「あそこは毎回時間かかるから、優先度下がるな」って思われたら、紹介の順番でも後回しになります。

これ、信頼関係の話なんです。

オーナーさんと管理会社の間に信頼関係があるからこそ、「この範囲なら任せます」って裁量が渡せる。そして、その裁量を使って管理会社は仲介業者と関係を築く。仲介業者は「ここの管理物件なら間違いない」って動いてくれる。

この三者の信頼の連鎖が、賃料の最大化につながってるんですよ。

「全部の判断を自分でやりたい」っていうオーナーさんも、もちろんいます。それも一つの選択。でも、スピードと柔軟性を取るなら、ある程度は任せるっていう選択肢も、ぜひ検討してみてほしいんです。


注意:「なんでも上げればいい」じゃないんですよ

ここまで読んで「よし、うちもガンガン上げてもらおう!」って思ったオーナーさん、ちょっと待ってください。

賃上げって、闇雲にやればいいってものじゃないんです。冷静に判断しないと、逆に決まらなくなります

よくある失敗例を一つ紹介しますね。

平米単価をやたら気にするオーナーさんがいたんです。「あと1,000円上げてくれたら、平米単価がキリの良い数字になるから、1,000円上げて」みたいな話。

たとえば、相場的に込み7万円で出すのが一番引っかかりやすい物件があったとします。これを、平米単価の都合で71,000円にしちゃう。

何が起きるか。

「家賃7万円以下」で検索してる人の検索結果から、漏れるんです。

部屋探ししてる人って、5千円単位で家賃を見てるケースが多いんですよ。「6万5千円で探してて、交渉幅も含めて7万円までならOK」みたいな探し方をしてる。

それを7万1千円にしちゃうと、本来引っかかってた検索の網から外れて、反応の分母が一気に減るんです。

7万1千円で出すぐらいなら、潔く7万円に下げるか、思い切って7万5千円にするか。中途半端に1千円積むのが、一番もったいないやり方なんですよ。

こういう判断って、相場と検索の動きを両方見てないとできないんです。だから、管理会社の市場感覚が大事なんですよ。


まとめ:「下げる提案しか来ない」は、黄色信号

長くなったので、まとめますね。

「築年数が経ったから家賃は下げるしかない」って、絶対の真理じゃないんです

賃上げのチャンスは、主に二つ。

一つ目は、退去→新規募集のタイミング。 ここで、思考停止で前回家賃のまま出すか、根拠を持って攻めるか。リフォーム、相場の動き、安価な設備追加、こういう要素を組み合わせれば、築年数が経ってても新築時を超える家賃で決められることはあるんです。そして、2回転目こそ希少性が活きるタイミングだと知ってる管理会社は、強い。

二つ目は、市場環境が大きく動いたタイミング。 ここは非弁行為のリスクがあるので、管理会社が前に出すぎるのはNG。でも、市況の変化を察知してオーナーさんに報告できるか、契約書の条項に則って意向を適切に伝えられるか、ここに管理会社の動ける範囲での実力が出ます。「形だけ書面送って終わり」と「ちゃんと交渉の土台を作る」では、結果が全然違うんですよ。

そして、賃上げのチャンスを活かすには、スピードが命。管理会社にある程度の裁量を渡しておくと、仲介現場での判断が早くなって、結果的に成約率が上がります。

最後に、一つだけ。

毎回「相場ですから、これくらいで」「下げて様子見ましょう」「前回と同じで行きましょう」、こういう提案ばかり来てるなら、それは黄色信号です。

一度、こう聞いてみてください。

「今回、上げられる可能性はないですか?」

そこで返ってくる答えで、その管理会社の実力が見えます。


そんな冷静な目線、知ってるだけで損しないんですよ。


オーナーさんに一つ質問です。今の管理会社、感覚で「まあいいかな」と思っていませんか?

僕がnoteで書いた有料記事では、管理会社を10項目・40点満点で採点できる設計にしています。採点スプレッドシートも特典でつけているので、読み終わった後すぐ手を動かせます。

「感覚じゃなくて数字で判断したい」オーナーさんに、特に読んでほしい内容です。

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この記事を書いた人

不動産業界歴約15年。仲介8年→現在は賃貸管理・リーシングがメイン。古い物件をリフォームで蘇らせて賃料アップを狙うのが一番の生きがい。
管理の現場で「オーナーさん、それ知らないと損してますよ…」な場面に遭遇しすぎて、このブログを始めました。
保有資格
宅建士/二級建築士/賃貸不動産経営管理士/賃貸住宅メンテナンス主任者/消防設備点検資格者/管理業務主任者

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