オーナーさん、ちょっと聞かせてください。
ご自身の物件、誰がどんな風に紹介してくれているか、見たことありますか?
「いや、それは仲介業者さんと管理会社の仕事だから…」
そうですよね。普通、見ないですよね。ここが落とし穴なんですよ。
仲介の現場で実際に何が起きているかを知らずに、空室対策の判断をしているオーナーさんが、本当に多いんです。「家賃下げますか」「リフォームしますか」「広告料出しますか」、こういう判断って、現場で何が起きているかを知らないと、適切に決められないんですよ。
今日は、その「見えない世界」を正直にお話しします。
ちょっと自己紹介させてください
実は僕、管理部門に来る前は客付け仲介を8年やっていました。お客さんの部屋探しに付き合って、物件を紹介して、契約まで持っていく仕事です。
その後、賃貸管理に異動したんですけど、今の会社は仲介業務もやっているので、繁忙期は今でも仲介のヘルプに入ります。それに、同じフロアで仲介担当のやり取りを毎日聞いてるので、現場が今どう動いているかは嫌でも目に入ってくるんですよ。
つまり僕、「客付け側の動き方」と「管理会社側の動き方」の両方を知ってるんです。
これって地味ですけど、結構重要な視点なんですよ。だって、オーナーさんは管理会社の話しか聞かないし、管理会社の中には客付け仲介の動き方を知らない人もいるんですから。
今日はその二つの世界の境目から見える話を、3つに絞ってお話しします。
リアル①:成約は「5千円単位」で動いてるんです
最初のリアルから、ちょっと衝撃的かもしれません。
部屋探ししているお客さんって、家賃を5千円単位で見てるんですよ。
どういうことか、具体的に説明しますね。
たとえば、お客さんが「家賃6万5千円くらいで探したいな」と思っているとします。この時、検索条件を組む時に「家賃7万円以下」で絞り込むんですよ。6万5千円ジャストじゃなくて、ちょっと交渉幅も含めた7万円で検索する。
これ、5千円単位で家賃帯を捉えているってことなんです。「7万」「7万5千」「8万」、こういうキリの良い数字が、検索フィルタの境界線になっている。
だから、平米単価で千円積むのは罠なんです
ここで、オーナーさんによくある失敗例を一つ。
「あと千円上げてくれたら、平米単価がキリの良い数字になるから、千円上げてください」
平米単価を気にするオーナーさん、たまにいるんです。気持ちは分かります。でも、込み7万円で出してた物件を、込み7万1千円にすると、何が起きるか。
「家賃7万円以下」の検索結果から、漏れるんです。
本来なら検索に引っかかっていたお客さんの目に、もう触れなくなる。反応の分母が一気に減るんですよ。
7万1千円で出すぐらいなら、潔く7万円に下げるか、思い切って7万5千円にするか。中途半端に1千円積むのが、一番もったいないんです。
これ、仲介の現場でお客さんの検索を見てないと、絶対に分からない感覚なんですよ。
ちなみにこの値付けの話は、賃上げ記事でも詳しく書いてます👉 「賃上げしてもらえますか?」──”家賃は下がるもの”って、誰が決めたんですか?

リアル②:法人借り上げ社宅は、「1円」で提案リストから消える
二つ目のリアルは、ちょっと知られてない世界の話です。
法人借り上げ社宅って、聞いたことあるオーナーさん、いらっしゃるかと思います。会社が社員のために物件を借りて、社宅として提供する形態ですね。
これ、個人の部屋探しよりもさらにシビアなスピード勝負が起きてるんですよ。仕組みから順に説明していきますね。
「家賃規定」という見えない壁
法人借り上げの場合、会社ごとに「家賃規定」というものがあるんです。
「単身の社員は家賃7万円まで」「家族帯同なら12万円まで」とか、規定で上限が決まっている。この規定を1円でもオーバーしたら、その物件はそもそも候補に入らないんですよ。
個人のお客さんなら「家賃ちょっとオーバーするけど、気に入ったから決めちゃおう」っていう柔軟性があります。でも法人借り上げは、規定が絶対なんです。家賃7万円規定の社員に、7万1千円の物件を提案することはできない。
提案リストに乗るかどうか、それが勝負
具体的にどう動くか、説明しますね。
社員の転勤が決まると、会社の総務担当者か社宅代行会社が、仲介業者に依頼します。
「期日までに、家賃7万円以内で、エリアと条件に合う物件をリストアップしてください」
仲介業者は、ポータルサイトや物件データベースから、条件に合う物件を集めて、提案資料を作る。この提案リストに乗らないと、物件はそもそも検討すらされないんです。
ここで、家賃7万1千円の物件があったとします。
「あと千円下げてくれたら、規定内に収まるんで、リストに入れられるんですけど」
仲介業者が管理会社に電話する。この返事が遅いと、何が起きるか。
期日までに返事が来なかったら、その物件は提案リストに乗らないんです。
「個別交渉」じゃなくて「提案レース」なんですよ
ここが個人案件と決定的に違うところなんですけど。
法人借り上げの場合、転勤社員は1人だけじゃないことが多い。複数人が同じタイミングで動いていて、社宅も複数戸まとめて提案する必要がある。期日までに、エリアごと・条件ごとに複数物件を揃えて、一括で会社に提出する。
つまり、「あの物件良さそうだから、別途追加で提案します」みたいな、後出しの追加提案が難しい場合が多いんですよ。
期日中に、規定に合う物件を集めて、まとめて提案する。これが基本動線です。
そうなると、千円下げられるかどうかの返事に丸一日かかる管理会社は、どうなるか。
そもそも提案リストに乗らない。
「決まらない」じゃないんですよ。「検討の土俵にすら上がらない」んです。
法人案件は、複数戸・継続的な関係につながる
しかも、法人借り上げって、継続的な関係になりやすい。
一度「あそこの会社の社宅、ここの管理会社の物件で決まったな」って実績ができると、次の転勤の時もまた同じ仲介業者・同じ管理会社のラインに案件が流れてきやすい。逆に、規定オーバーで提案できなかった管理会社は、次もまた候補から外れる。
つまり、千円の即答ができなかったことで、複数年・複数戸の成約機会を失うことがあるんですよ。
このスピード感、オーナーさんから見えてないんです。でも、現場では確実に起きているんです。
リアル③:仲介業者との「独自ネットワーク」が、空室対策を変えるんです
三つ目のリアルは、たぶん今日の話の中で一番オーナーさんが知らない世界です。
管理会社と仲介業者の間には、「独自ネットワーク」とも呼べる関係があるんですよ。
「バルさん、この条件で紹介できる部屋ないですか?」
僕の今のスタイルを正直にお話ししますね。
僕、管理会社の立場で仕事してるんですけど、信頼してる仲介業者さんが何人かいます。その人たちって、お客さんの希望条件を持って、僕に直接電話してくるんですよ。
「バルさん、お客さんが◯◯駅周辺で家賃8万円以内、ペット可で探してるんですけど、お宅の管理物件で出せる部屋ないですか?」
ポータルサイトを検索する前に、先に管理会社に直接聞く。これ、結構な頻度で起きてます。
なぜそうするかって、ポータルサイトに載ってる情報がすべてじゃないからなんですよ。
まだ募集に出してない部屋の情報も、信頼してる仲介には出す
ここがオーナーさんに知ってほしい話なんですけど。
たとえば、退去予告が入って、来月末で空くことが決まってる部屋があるとします。普通は、退去後にクリーニング・原状回復をして、写真を撮って、ポータルサイトに掲載する流れです。この間、だいたい1ヶ月くらい空室期間が発生するんですよ。
でも、信頼してる仲介業者さんから「来月引っ越しのお客さんで、この条件の部屋を探してる人がいるんですけど」って連絡があったら、まだ募集情報に出してない、この退去予定の部屋を紹介することがあるんです。
「来月末空く予定の部屋があります。条件もたぶん合うと思います。先に内見だけしてみますか?」
こういう動きができると、退去後すぐに次の入居者が決まるんですよ。空室期間がほぼゼロ。
これ、ポータルサイトに掲載される前に決まってるので、外から見えないんです。オーナーさんも気づかない。でも、現場ではこういうやり取りが日常的に起きてる。
なぜ、未公開情報を出すのか
「なんで、ポータルに載せる前に教えるの?オープンにした方が高く決まるんじゃないの?」
そう思いますよね。これも正直に話します。
仲介業者との関係って、お互いに「貸し借り」の感覚があるんですよ。
いつも難しい条件のお客さんを連れてきて成約させてくれる仲介業者がいる。「この前のお客さん、なかなか決められなくて大変でしたよね」「いやー、バルさんのとこの物件があってよかったです」、こういう関係が積み重なる。
そうすると、「この仲介さんのお願いなら、融通きかせてあげようかな」っていう気持ちになるんですよ。
これ、人と人の仕事だから当然なんですよね。いつも成約させてくれる仲介業者には、こちらも何かしら返したい。だから、未公開の情報を先に出したり、家賃交渉に応じたり、広告料の融通を効かせたりする。
逆に、お客さんを連れてきても適当な対応ばかりの仲介業者には、こちらも普通の対応しかしません。信頼の貯金がない仲介業者には、特別な動きはしないんです。
この関係性が、オーナーの空室期間を決めてる
ここが今日の核心です。
オーナーさんから見ると、空室対策って「家賃を下げる」「リフォームする」「広告料を出す」みたいな、お金をかける施策として捉えがちなんですよ。
でも、現場で起きてる本当の勝負って、管理会社と仲介業者のネットワークなんです。
- 仲介業者から「この条件で出せる部屋ないですか?」と直接聞いてもらえる管理会社
- 信頼してる仲介業者には、未公開情報も先に出せる管理会社
- いつも成約させてくれる仲介業者には、融通を効かせてあげようと思える管理会社
こういう動きができる管理会社は、ポータルサイトに掲載する前に空室を埋められるんです。
逆に、こういうネットワークを持っていない管理会社は、毎回ポータルサイトに掲載して、反応を待って、内見対応して、契約まで漕ぎ着けるっていう、長いプロセスを踏む。当然、空室期間も長くなる。
同じ物件でも、管理会社が違うだけで、空室期間は全然変わるんですよ。
「仲介の動き方を知ってる管理会社」かどうか
ここで一つ、オーナーさんが管理会社を見極めるポイントをお伝えします。
今、管理を任せている管理会社は、仲介の動き方を知ってますか?
仲介経験者がいるか。仲介業者と日常的にやり取りしてるか。「この仲介さんはお客さんを連れてきてくれる」みたいな具体的な名前が出てくるか。
こういう問いに答えられない管理会社は、仲介との関係性が薄い可能性が高いです。そして、関係性が薄いと、独自ネットワークで決まる成約機会を逃してる可能性があります。
これ、オーナーさんからは絶対に見えない損失なんですけど、実は結構大きいんですよ。
だから、オーナーがやるべきこと
ここまで読んでくれたオーナーさん、お気づきかもしれません。
仲介現場のスピード、検索フィルタ、独自ネットワーク。この3つは全部、「管理会社が現場で動けるかどうか」「仲介業者と良い関係を築けてるか」にかかっています。
そして、管理会社が動けるかどうかは、オーナーさんがどれだけ裁量を渡しているかで決まるんですよ。
「全部自分で決めたい」の代償
「家賃の判断は全部自分でしたい」「千円下げる時も毎回相談してほしい」、こういうオーナーさんもいます。気持ちは分かります。自分の物件ですから、自分で決めたいって当然です。
でも、これには代償があります。
毎回の確認が、千円の即答を不可能にするんです。そして、千円の即答ができないと、提案リストに乗らない、仲介業者の信頼を失う、未公開情報の流通から外される。
これ、「全部自分で決めた」結果として、空室期間が長引いているケース、結構あるんですよ。
裁量を渡すのは、丸投げじゃなくて戦略
ここで誤解してほしくないんですけど、「全部任せろ」って話じゃないんです。
「家賃の下限は◯万円まで、それより下げる時は相談」「広告料は◯ヶ月分まではOK」みたいに、上限・下限を決めて、その範囲内で管理会社に判断を任せる。これが現実的な落とし所です。
僕の感覚では、この裁量の枠を決められているオーナーさんの方が、運営が圧倒的にうまく回ってるんですよ。
そして、その裁量を渡すには、信頼できる管理会社を選ぶ必要がある。
ここでカテゴリーが繋がるんです。良い管理会社を選んで、その管理会社に適切な裁量を渡す。これが、オーナーの心構えとして一番大事なポイントなんじゃないかと、僕は思っています。
まとめ:仲介現場が見える管理会社を選んで、動ける環境を作る
長くなったので、まとめますね。
仲介の現場で起きている3つのリアル:
リアル①:成約は「5千円単位」で動いてる お客さんは検索フィルタで物件を絞り込む。千円の値付けの違いが、反応の分母を変える。
リアル②:法人借り上げ社宅は「1円」で提案リストから消える 1円の規定オーバーで、提案リストに乗らない。即答できないと、検討の土俵にすら上がらない。
リアル③:仲介業者との「独自ネットワーク」が、空室対策を変える 信頼関係のある仲介業者からは、ポータル掲載前に直接問い合わせが来る。未公開情報を先に出すこともある。この関係性が、空室期間を決めてる。
これらは全部、仲介現場を知らないと見えない世界です。そして、これを知らないまま「家賃を上げるべきか下げるべきか」「裁量を渡すべきか渡さないべきか」を判断していると、気づかないうちに成約機会を失っていることがあるんです。
オーナーさんに最後に伝えたいのは、二つだけ。
一つ目:仲介現場が見えてる管理会社を選んでください。 仲介経験のある人がいるか、仲介業者と日常的なやり取りがあるか、具体的な仲介業者の名前が出てくるか。これは結構な差になります。
二つ目:その管理会社に、適切な裁量を渡してください。 全部任せろじゃない。上限・下限を決めて、その範囲で動ける環境を作る。これが「動ける物件」を作る土台になります。
仲介の動き方が見えてる管理会社か、ただポータルサイトに掲載するだけの管理会社か。それだけで、空室期間も、家賃の到達点も、変わってきます。
賃貸経営って、オーナーさんが直接動く場面って実は少ないんですよ。動くのは管理会社と仲介業者で、オーナーさんは「動ける環境を作る人」なんです。
だからこそ、現場が見えてる管理会社を選んで、その管理会社が動ける環境を作る。これが、オーナーの心構えとして一番大事なんじゃないかな、と僕は思っています。
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