こんにちは、バルです。
事故物件の再募集は、時間との勝負です。大島てるに載って情報が拡散する前に、 いかに早く決め切るか。本記事では、過去2回の実体験を元に、管理会社が実践すべき 5つのテクニックを解説します。値下げ幅・契約形態・契約文言・問い合わせ対応・ 長期戦略まで、実務に直結する内容です。
前回の記事で、自然死で告知義務のなかった一室が大島てるに載せられて、2年経っても消えない、という話を書きました。

あの記事は、いわば「問題提起」の話でした。今日はその続編として、もっと実務的な話を書きます。
つまり、実際に事故物件が出てしまった時、管理会社はどう動くべきか。
大島てるに載って情報が拡散してしまえば、物件の価値は大きく下がります。だからこそ、現場での勝負は「載る前に決め切る」スピード勝負になります。
過去に2回、僕自身が事故物件の再募集を担当した経験から、実践してきたテクニックを5つ、まとめます。
そもそもの前提:事故物件再募集の3つの敵
具体的なテクニックに入る前に、僕たち管理会社が何と戦っているのかを整理させてください。これがわかると、この後の話の意味が伝わりやすくなります。
敵①:時間(情報が拡散する速度)
大島てるに載るまでの時間が勝負です。一度載ってしまうと、前回の記事で書いた通り、削除依頼を出しても2年経っても消えません。情報がネット上に固定される前に、決着をつける必要があります。
敵②:価格交渉(オーナーさんの値下げ抵抗)
事故物件であっても、オーナーさんとしては家賃を下げたくない、という気持ちは当然あります。でも、ここで「事故物件だから少しだけ下げる」という中途半端な対応をすると、かえって長期化してリスクが上がります。これは後ほど詳しく説明します。
敵③:情報の漏洩(仲介業者経由の拡散)
レインズやリアプロといった業者間のサイトに通常通り載せてしまうと、何百社という仲介業者の目に触れます。その中に、悪意なく情報を拡散させてしまう人や、大島てるに通報する人が混ざるリスクが上がります。
この3つの敵を意識して、以下のテクニックを設計しています。
テクニック①:相場の60〜70%まで思い切って下げる
最初に伝えたいのは、値下げの「中途半端」が一番危険だということです。
中途半端な値下げが一番リスクが高い理由
例えば相場8万円の物件を、事故物件ということで7万5千円に下げて募集したとします。一見「ちょっと割安だな」程度に見えますが、実はこれが一番厄介です。
ポータルサイトを見ている人や、業者の中には、「この物件、なんで微妙に安いんだろう?」と勘ぐる人が必ず出てきます。そして、ネットで物件名を検索したり、近隣を調べたりして、大島てるに辿り着く。最悪、本来書き込まれていなかった情報まで、わざわざ書き込まれてしまうこともあります。
「微妙に安い」は、むしろ「調べてください」と看板を出しているようなものなんです。
60〜70%を推奨する根拠
相場8万円なら、5万円〜5万6千円。明らかに安い水準まで下げます。
ここまで下げると、入居希望者にとっても「この値段なら何か事情があるんだろう」と、ある意味割り切って問い合わせをしてくれます。「事故物件であることを承知の上で、安く住みたい」という層が、ちゃんと反応してくれる価格帯です。
結果として、母数は限定されますが、決まる確率は格段に上がります。早く決まれば、それだけ大島てるに載るリスクも下がります。スピードが資産価値を守るんです。
オーナーさんへの説明の仕方
「半年空室で家賃ゼロのまま放置」と「最初の1〜2年だけ60%の家賃で稼働させる」を、数字で比較して見せるのが効果的です。
例えば月8万円の物件で、空室期間が半年続けば48万円の機会損失。それなら、5万円で1年稼働させたほうがトータルで得です。さらに、後述しますが3年経てば告知義務がなくなるケースもあるので、「3年間の時限的な値下げ」という発想を共有してもらえると、オーナーさんも納得しやすくなります。
過去の実例では、相場8万円台の物件を5万円台で募集して、3週間以内に決まったケースがありました。逆に、最初に相場の85%程度で募集して、2ヶ月決まらずにさらに下げた物件は、最終的に60%まで下げてようやく決まりました。最初から思い切って下げたほうが、結果的にトータルの損失は小さかった、という感覚です。
テクニック②:レインズ・リアプロには載せない(ただし契約形態の工夫が必要)
これは少し踏み込んだ話になります。
通常の募集ではレインズに載せて間口を広げるのが基本
普通の物件であれば、レインズや業者間サイトに載せて、できるだけ多くの仲介業者経由で入居者を集めるのがセオリーです。母数が多いほど、決まる確率が上がりますから。
ただし、事故物件の場合は載せない判断もある
事故物件は逆です。情報の拡散経路を絞ったほうが、安全に決め切れます。レインズに載せると、それを見た仲介業者の中の誰かが、何かのきっかけで大島てるに通報する可能性がゼロではありません。実際、過去にそうしたケースが業界内で起きていると聞きます。
だから、管理会社の自社サイトと、信頼できる一部の業者にだけ情報を出して、自社で受けた問い合わせだけで決め切る、という戦略が有効です。
ここで注意点:契約形態の工夫が必要
ただし、ここで一つ法的な注意点があります。
オーナーさんと専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んでいる場合、宅建業法上、契約締結後一定期間内にレインズへ登録する義務があります。専任媒介で7営業日、専属専任媒介で5営業日です。
つまり、「レインズに載せない」と決めるには、媒介契約の形態を工夫する必要があるんです。
解決策の整理
事故物件の再募集に限っては、オーナーさんと管理会社の関係を以下のように整理します。
- 媒介契約を一般媒介に切り替える、もしくは媒介契約を結ばない
- 募集の窓口は管理会社が担うが、賃貸借契約はオーナー直契約にする
- 管理会社は「オーナーの募集サポート」という立場で動く
これで、レインズ非掲載が合法的に成立します。情報の拡散経路を自社サイトに絞れて、入居希望者には管理会社が直接対応する。契約自体はオーナーさんと入居者さんの間で結ぶ、という形です。
オーナーさんが管理会社に頼むべきこと
オーナーさんの立場からすると、こういう動きを管理会社に明示的に相談する必要があります。
「事故物件の再募集は、レインズに載せないで自社サイトだけで募集してほしい。そのために、今回だけ媒介契約の形を切り替えて、契約は私と入居者の直接契約にしたい」
こういう相談を受けて、ちゃんと対応してくれる管理会社かどうか。これは、いざという時の管理会社の実力を測る一つの指標にもなります。
業界の現状(本音)
正直なところ、業界の慣習として実際にどう運用されているかは、各社の判断に委ねられている部分もあります。事故物件の再募集というケース自体、そう頻繁に発生するものではないので、各管理会社がその都度、オーナーさんの意向と物件の状況に応じて臨機応変に対応している、というのが実態です。
大事なのは「ルールの存在をちゃんと理解した上で、適切な契約形態を選ぶ」こと。そして、それをオーナーさんと管理会社の間で、事前にすり合わせておくこと。これができていれば、いざという時に慌てずに動けます。
テクニック③:申込時に必ず入れる契約文言
ここからは、入居者さんが決まった後の話です。
入居者には事実を必ず伝える
大前提として、事故物件であることを隠して入居させるのは絶対にNGです。後でトラブルになりますし、宅建業法上の告知義務違反にもなります。
入居希望者さんには、ガイドラインで定められた範囲(事案の発生時期、場所、死因、特殊清掃の有無)を、書面で説明します。氏名や年齢、家族構成といった個人情報は告知の対象外です。
そして、入居者さんが事実を理解した上で申し込んだ、ということを記録に残します。
契約書に入れるべき2つの条項
ここからが、この記事の中でも一番実務的に役立つ部分かもしれません。
条項①:口外禁止条項
契約者は、本物件における過去の人の死に関する事案について、第三者に口外しないものとする。これには、インターネット上の掲示板・SNS・口コミサイト等への書き込みを含むものとする。
ポイントは、「口外」の中にネット上の書き込みを明示的に含めること。大島てる的なサイトへの書き込みを抑止する効果があります。
条項②:違反時のペナルティ条項
前項に違反し、本物件の価値が損なわれた場合、貸主は契約者に対し、損害賠償を請求できるものとする。また、貸主は契約を解除し、契約者に対して即時退去を求めることができる。
「違反したら違約金」だけだと法的に弱くなる場合があります。「物件の価値が損なわれた場合の損害賠償」という根拠を明確にしておくのが重要です。
文言作成の注意点
実際に使う契約文言は、念のため弁護士さんに一度チェックしてもらうのを推奨します。地域や物件の状況によって、適切な表現が変わることがあるので。
僕の経験では、宅建業界に詳しい弁護士さんに30分ほど相談すれば、十分な文言が固まります。一度作っておけば、今後同じようなケースで使い回せるので、長期的にはコストパフォーマンスがいいです。
なぜここまでやるのか
「口外禁止条項なんて、書いたところで守られないんじゃないか」と思うかもしれません。
でも、入居者さんが悪気なく友人に話す → 友人が大島てるに書き込む、というパターンが実際にあります。契約書に「ペナルティがある」と書かれていれば、入居者さんも軽率な発言を控えるようになります。
「縛り」を入口で設定することで、こちらの本気度が伝わる、という効果もあります。
テクニック④:問い合わせ対応の段取りを決めておく
自社サイトに掲載すると、問い合わせは全部自社で受けることになります。ここで「いつ、どう事実を伝えるか」の段取りを事前に決めておくことが重要です。
早すぎても遅すぎてもダメ
最初の問い合わせメールで「実はこの物件、事故物件です」と書いてしまうと、相手が引いてしまって離れます。
逆に、内見当日まで黙っていて、現地で初めて伝えると、相手は「騙された」と感じて不信感を持ちます。
タイミング設計が必要です。
推奨する段取り
僕が実践してきた流れはこうです。
1. 初回問い合わせ対応 物件の概要、家賃、間取り、立地などの基本情報のみ。事故物件であることは、この段階ではまだ伝えません。「内見をご希望でしたら、お電話で詳細をご説明させてください」と、電話に誘導します。
2. 内見予約の電話 電話の中で、「この物件は告知事項のある物件です」と、簡潔にお伝えします。詳しい内容は、内見時に書面でお渡しすると伝えます。この段階で「やっぱり結構です」となる方は、無理に引き止めません。
3. 内見時 書面で詳細を説明します。淡々と、ガイドラインで定められた範囲だけを伝えます。質問には誠実に答えますが、必要以上の情報は出しません。
伝え方のトーン
過剰に怖がらせない、淡々と事実だけ。これが鉄則です。
「お亡くなりになった方がいらっしゃいました」「発見は●日後でした」「特殊清掃は入っています/入っていません」程度の事実関係に絞ります。
「断る」勇気も持つ
興味本位で問い合わせてくる人もいます。「事故物件、面白そう」「YouTubeのネタにしたい」みたいな相手は、対応に時間を使うだけ無駄です。
本気で住みたい人に集中して対応するほうが、結果として早く決まります。
テクニック⑤:「3年」というゴールを意識する
最後のテクニックは、長期的な視点の話です。
国交省ガイドラインの「概ね3年」ルール
宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインでは、賃貸の場合、特殊清掃等が入った事案でも概ね3年で告知義務がなくなるとされています。自然死で発見が早く特殊清掃が入っていない場合は、そもそも最初から告知義務がありません。
つまり、事故物件の再募集は「3年間の時限的な問題」として捉えることができます。
3年運用の戦略
具体的にはこんな流れです。
- 最初の入居者には事実を告知して、相場の60〜70%で入居してもらう
- 仮に2年程度で退去された場合、次の入居者にも告知(3年経過まで)
- 3年経過後は、告知義務がなくなり、家賃も通常価格に戻せる
「3年我慢すれば元に戻る」という出口が見えると、オーナーさんも長期的な視点で受け入れやすくなります。
長期空室との比較
事故物件だからといって長期空室にすると、家賃ゼロのまま固定資産税や管理費だけが出ていきます。短期的に値下げして稼働させたほうが、トータルの収支は圧倒的に良くなります。
例外:問われた場合は告知が必要
ただし、ガイドラインには重要な例外があります。3年経過後であっても、買主・借主から「過去に事案はありましたか?」と問われた場合は、告知が必要です。
これは管理会社・オーナーさんが頭に入れておくべきポイントです。「3年経ったから完全に忘れていい」わけではありません。
それでも、どうしようもない時もある──現場の話
ここまで5つのテクニックを紹介してきました。
これらは全部、管理会社・オーナーさんが努力すればコントロールできる範囲の話です。値下げの判断も、契約形態の選択も、契約文言の設計も、問い合わせ対応も、長期戦略も。自分たちでハンドリングできる。
でも、現場には自分たちの努力ではどうにもならない要素もあります。
これは、ある事故物件の対応をしていた時の話です。
入居者さんが室内で亡くなられて、警察の方が現場検証に来てくれました。警察も仕事ですから、もちろん必要なやり取りです。
でも、現場検証中、警察官の方が共用部で「室内で人が亡くなっていて〜」「発見が遅れていて〜」と、結構な大声で会話していたんです。
エントランスや廊下で、他の入居者さんが普通に通る場所で。
オーナーさんが、激怒しました。
「他の入居者に知られたくないんだ。デリカシーなく大声で話すな!」と。
僕も同席していて、その時のオーナーさんの気持ちはよくわかりました。情報が漏れれば、結果として大島てるへの書き込みに繋がっていく可能性がある。それを必死に防ごうとしている矢先に、警察官の方が大声で話してしまう。
ただ、これは警察を批判したいわけじゃないんです。警察官の方々も、仕事として現場でやり取りする必要があるのは理解しています。マニュアル通り、必要な確認をしている。
でも、もう少しだけ配慮があると、現場としては本当に助かる、というのが正直なところです。
そして、こういう「自分たちのコントロールが効かない場面」があるからこそ、コントロールできる部分は最大限ちゃんとやる。
テクニック①〜⑤を徹底することの意味は、ここにあります。防ぎきれない部分があるのを承知の上で、防げる部分は確実に防ぐ。それが管理会社の仕事だと、僕は思っています。
まとめ
事故物件の再募集について、5つのテクニックをまとめました。
- 相場の60〜70%まで思い切って下げる:中途半端な値下げが一番危険
- レインズ・リアプロには載せない:ただし契約形態の工夫が必要
- 申込時に必ず入れる契約文言:口外禁止+違反時ペナルティの2条項
- 問い合わせ対応の段取り設計:いつ、どう伝えるかのタイミング設計
- 「3年」というゴールを意識する:時限的な問題として長期視点で捉える
共通する考え方は、「情報の拡散速度に負けない」「コントロールできる範囲を最大限コントロールする」です。
前回の記事で書いた通り、大島てるに載ってしまうと、削除依頼を出しても2年経っても消えません。だからこそ、載る前に決め切る、という発想が重要なんです。
→ 大島てるに自然死で載せられた話|削除依頼2年経っても消えない管理会社の実体験

事故物件の対応は、管理会社の真価が問われる場面です。普段から信頼できる管理会社と組んでおくことが、こういう時の差になります。
おまけ:あなたの管理会社、いざという時に頼れますか?
今回紹介したような事故物件の再募集対応は、管理会社の経験と判断力、そして法的な知識が試される場面です。レインズの取り扱い、契約形態の選択、契約文言の設計──こうした実務に踏み込んで動ける管理会社は、業界の中でもそう多くありません。
オーナーさんが「うちの管理会社、本当に大丈夫かな?」と見極めるための10の質問を、採点シート付きでnoteにまとめています。
👉 管理会社を見極める10の質問|現役社員が本音で解説する「点数化」採点シート付き完全ガイド
事故物件対応のような、いざという時の管理会社の真価が問われる場面で慌てないために。今のうちに、見極めておいてください。