「月に何回、物件に行ってますか?」──行かなくても管理は回る。でも、それは”良い管理”じゃない。

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こんにちは、バルです。

良い管理会社を見極める10の質問」の記事で、最初に挙げた質問がこれでした。

「月に何回、物件に行っていますか?」

管理会社なんだから当然行ってるでしょ? と思いますよね。ところがどっこい、まったく行かない管理会社、結構いるんですよ。

でもね、正直に言います。
物件に行かなくても、「最低限の管理」は回るんです。

……ただし、それは”良い管理”とはまったく別の話なんですよね。

今回は、この質問の裏側にあるものを、僕の現場経験をもとにじっくり掘り下げてみます。

目次

行かなくても”回る”の正体

誤解を恐れずに言うと、物件に行かなくても管理業務は成り立ちます。

外注の清掃業者に定期清掃を依頼して、入居者からクレームが来たら電話で対応して、書類の処理や契約業務はオフィスでやる。事務処理としての管理は、これで一応まわるんです。

特に大手の管理会社になると、業務が縦割りになっていることが多い。リーシング(客付け)の担当と、リフォームの発注をする担当と、物件管理の担当がそれぞれ別の人。こうなると、リーシング担当は物件に行かないし、現場のことをよく知らないまま募集をかけている、なんてことが割とあるんですよ。

それぞれが自分の持ち場の仕事をこなしているから、全体としては「回っている」ように見える。でも、誰も現場を見ていない——そんな状態が生まれやすいのが、この分業体制の落とし穴なんです。

でも、”気づけない”ことがある

僕の場合、担当物件には最低でも月1回は行くようにしています。会社の近くにある物件なら、ついでに見ることも含めて週1くらい。遠方でわざわざ車や電車で行かないといけない物件でも、月に1回は必ず。

入居前のチェック、リフォームの仕上がり確認、水道検針のついで。きっかけはいろいろですけど、現場に行くたびに「来てよかった」と思うことがあるんです。

空室があれば、各部屋の封水が切れていないかを確認します。しばらく水を流していないと排水トラップの封水が干上がって、下水管から悪臭が上がってくる。ひどいと排水溝にコバエが湧いていることもあります。これ、現地に行かないと絶対に気づけません。

ゴミ庫を覗いたら、不法投棄された粗大ゴミがたんまり溜まっていた——なんてこともあります。実際、他社から管理を引き継いだ物件でこれを見たときは、さすがにちょっと言葉を失いましたね。前の管理会社、どのくらい来てなかったんだろうと。

宅配ボックスが常に満杯で機能していない、管理用ポストにチラシが山盛り。こうした「数字には出ないけど確実に物件の価値を下げている」サインは、現場に行かないと拾えないんですよ。

ちなみに、満室の物件なら巡回は15分くらいで見終わります。たった15分。でも、その15分で気づけることは本当にたくさんあるんです。

仲介業者は正直

僕は管理の仕事をする前に、仲介業務を8年やっていました。お客さんを物件に案内する側ですね。だからわかるんですけど、仲介業者って、物件に着いた瞬間に「ここはアリかナシか」をほぼ判断しています。

エントランスの雰囲気、共用廊下の清潔感、ポスト周りの整頓具合、そして匂い。お客さんよりも先に、案内する側が無意識にチェックしているんですよ。

面白い話があって、転勤慣れしているお客さんは物件を見る前にまずゴミ置き場をチェックするんです。ゴミ置き場が荒れていると「ここはマナーの悪い住人が多いな」と判断する。住人の民度を測るバロメーターなんですよね。管理会社が現場を見ていなければ、この「第一印象」がどんどん悪化していることにすら気づけない。

逆に、いつ行っても綺麗でリフォームの仕上がりも丁寧な物件は、安心して紹介できます。急ぎの転居で物件を見ずに決めるケースもあるんですけど、そういうとき仲介業者が自信を持って勧められるのは、「この物件はいつ見ても大丈夫」という信頼の貯金がある物件なんです。

この信頼貯金、現場に通い続けることでしか積み上がりません。

提案力の差は、現場から生まれる

現場に行っていると、「もったいないな」と思う物件に出会うことがあります。

たとえば、間取りはとても綺麗な形で使いやすいのに、なぜか床がクッションフロア。そのせいでめちゃくちゃ安っぽく見えるんですよ。間取り図だけ見たら魅力的なのに、内覧した瞬間に「うーん…」となる。これ、本当にもったいない。

現場を見ていない管理会社には、この「もったいなさ」がわからないんです。だから提案もできない。結果として「安いやつでいいですよね」という発想になって、安かろう悪かろうの設備更新が繰り返される。オーナーさんが「お金をかけたくない」と言えば、「そうですよね」で終わってしまう。

僕は結構粘る派です。

以前、日焼けで傷んだフロアタイルの張り替えを提案したことがあります。オーナーさんは費用が嵩むからと嫌がっていたんですけど、なんとか話を通しました。結果、繁忙期と重なったこともあって、以前より月5,000円高い賃料で決まったんです。年間にすると6万円。張り替えの費用は十分に回収できる計算です。

こういう提案って、現場を見ていないとそもそも発想が出てこないし、「この物件はここを直せば化ける」という確信がないとオーナーさんを説得できない。

ただ、正直に言うと、これは担当者の考え方次第なところもあるんです。うちの会社でも、ここまで粘って提案するのは僕くらいかもしれません。だからこそ、オーナーさんの側から「こういう改善提案はしてもらえますか?」「費用対効果を考えた提案をしてくれますか?」と聞いてみてほしいんです。その質問への反応で、担当者のスタンスが見えてきますから。

大手の”効率化”が生むジレンマ

大手の管理会社が悪いと言いたいわけじゃないんです。ただ、構造的に「現場に足を運ぶ余裕がない」状態に陥りやすいのは事実です。

担当者ひとりあたりの管理戸数がとにかく多い。みんな死ぬほど忙しくて、目の前の仕事を回すだけで精一杯。新しい提案をする余裕なんてない、というのが実情だと思います。

一時期、管理料をめちゃくちゃ安くして、とにかく管理物件の数を増やしていた大手管理会社がありました。でも結局、管理品質が追いつかなかったんですよね。「管理会社を乗り換えたい」という相談が、うちにも来ていました。

ひどい話だと、退去後の原状回復が3ヶ月くらい放置されていたケースもあったそうです。3ヶ月ですよ。その間ずっと空室で、家賃収入はゼロ。管理料が安くても、これじゃ本末転倒ですよね。

安さには安さの理由がある。管理料の安さだけで選ぶと、結果的にもっと大きなコストを払うことになりかねません。

エリアの距離という、見落としがちな現実

もうひとつ、正直にお話ししておきたいことがあります。

どんなに良い管理会社でも、物件から遠い場所に拠点がある場合、現場力はどうしても落ちます。

これは僕自身の実感としてもそうで、会社の近くにある物件と、車や電車でわざわざ行かないといけない物件とでは、やっぱり足を運ぶ頻度も、何かあったときの対応スピードも変わってきてしまうんです。意識の問題ではなく、物理的な距離の問題として。

だからオーナーさんにお伝えしたいのは、管理会社の質だけでなく、物件との距離も選ぶ基準に入れてほしいということ。ベストは、同じエリアに拠点を持っている良い管理会社を見つけること。これだけで、日々の管理の質がかなり変わってきます。

「回っている」と「良い管理ができている」は、まったく別の話

物件に行かなくても、事務処理としての管理は回ります。
でも、封水の悪臭にも、ゴミ庫の荒れにも、仲介業者の第一印象にも気づけない。
提案は机上の空論になり、オーナーさんの資産価値はじわじわと下がっていく。

「月に何回、物件に行っていますか?」

この質問への答え、そしてその答え方に、管理会社の「現場主義」の本気度が出ます。具体的な頻度を教えてくれるか。行ったときに何を見ているかを語れるか。そこに誠実さがあるかどうか。

たった15分の巡回でも、行くと行かないとでは見える世界がまったく違う。僕はそう思っています。

この記事は「良い管理会社を見極める10の質問」の第1問を掘り下げたものです。他の質問もぜひチェックしてみてくださいね。

それでは、また次の記事で。
バル


この記事で触れた内容、もっと深く知りたいオーナーさんには、僕がnoteで書いた有料記事があります。

管理会社を見極める10のチェックポイントを、現役社員の本音で一気に整理したものです。採点スプレッドシート付きで、今の管理会社を数字で評価できる設計にしてあります。

ブログでは書ききれなかった話を、ここに全部詰め込みました。気になるオーナーさんはぜひ。

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この記事を書いた人

不動産業界歴約15年。仲介8年→現在は賃貸管理・リーシングがメイン。古い物件をリフォームで蘇らせて賃料アップを狙うのが一番の生きがい。
管理の現場で「オーナーさん、それ知らないと損してますよ…」な場面に遭遇しすぎて、このブログを始めました。
保有資格
宅建士/二級建築士/賃貸不動産経営管理士/賃貸住宅メンテナンス主任者/消防設備点検資格者/管理業務主任者

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